mixiでも「歴史小説」という華やかさゼロなコミュニティに入っているので、最近読んだ本の感想を書いてみる。
藤沢周平というと「たそがれ清兵衛」だったりまもなく公開の「隠し剣 鬼の爪」や「蝉しぐれ」あたりが、映画のお陰もあって有名かもしれない。僕の中では、どっちかという渋めな地味な印象の作家だ。
大概、歴史小説に興味を持つときは、戦国モノだったり幕末だったりで、歴史上でも有名な人物、信長とか龍馬とかに惹かれて読み始めることが多いんじゃないかと思う。英雄達の物語はやっぱり面白い。
藤沢周平の場合、そういった英雄は出てこない。その辺が地味な印象の原因の一つかもしれない。
でも、とても味わい深い作品が多いのも事実だ。描き出す心情というか人間模様が素晴らしい。
平凡だけど温かくて、暗い話も多いのだけど、一人の侍の、突き詰めて言えば一人の人間の生き様が、決して過剰になることなく丁寧に描かれている。
藤沢作品をしみじみと読めるようになると、ああ俺も大人になったのだな、と思えばよい。
最近読み出したばかりなので、僕もあまり偉そうなことは言えないが。
で、前置きが長くなったが「霧の果て―神谷玄次郎捕物控」はタイトル通り、神谷玄次郎という定町廻りの同心が主人公。
やる気が無くてさぼりがち。役所でも評判が良くない。小料理屋の女将のところに入り浸って酒ばかり飲んでいる。けれども探索の腕は抜群だったりする。
幾つかの短編から成っているのだけど、どれも切れ味が良い。
ニヒルな陰のある主人公は、ある意味ハードボイルドなタッチをこの作品に加えている。とても魅力な主人公だ。
こういう風になりたいな、とは思わないが、でもカッコ良い。そういう日陰者の魅力がある。
捕り物としても面白く、ほんのちょっとした手掛かりから的確に探索を進めていく主人公の鋭さにはちょっと舌を巻く。
自分の父が関わった事件について、全編を通してストーリーが展開して最終話で決着するんだけど、ちょっとずつ展開しながら上手く読者を引き込んでいくのはさすがだと思う。終わり方も藤沢周平ならではの味わい深さがある。
ハードボイルドな小説が好きな人だったりすると、かなり気に入るんじゃないかなと思います。